無線が有線より速い?
結論から言うと、無線LANの通信速度は2016年ごろには1Gイーサネットの有線LANを上回っている。従来の通信規格である11ac Wave2の理論上の最大速度は6.93Gbpsで、有線LANが1Gイーサネット(CAT5e/CAT6)の場合は理論上の最大速度が1Gbpsとなってしまう。特にケーブルやスイッチングハブなどの量が多く交換コストが高い会社などにおいては、未だ1Gイーサネットが利用されている場合が多く、そのような環境においては11acの無線で接続した方が速いということが言える。
有線でもCAT8は理論上の最大速度が驚異の40Gbpsだが、2019年12月現在ではそのポテンシャルを使いきる通信環境(プロバイダ、ルータ、ケーブル、ハブなど)は存在しない。CAT7A~CAT6A/6Eは10Gbpsで理論上の最大速度が11ac Wave2を上回るが、次世代無線LAN規格であるIEEE802.11axとあまり変わらない性能になってしまった。
誤解のないように言っておくと、無線は環境要因(ルータ・子機・場所)により大幅に通信速度が変化するため、理論上の最大速度は有線よりも出しにくいことが多い。有線の方が理論上の最大速度は出やすいが、ルータ・ケーブル・ハブを更新していない人(CAT6どまり)が多く、1G/CAT6であれば最大速度1Gbpsのため環境要因があったとしても11acの方が出やすいという話。逆に10G/CAT6A以上の有線の場合は11acで接続すべきではない。
ルータスペックの有線通信速度は良くても1000Mbps
ちなみに上記の「CAT〇〇」は通信ケーブルの規格だが、ルータの有線LANの転送速度は更に低く、11acに対応している比較的新しいものでも1Gbpsまでしか対応していないものが多い。例えば以下の売れ筋ランキング2位「Aterm WG2600HP3 PA-WG2600HP3」は5GHz帯の無線速度1733Mbps、有線速度100/1000Mbpsとなっており無線LANの方が速い。
最大通信速度一覧(無線)
規格 | 愛称 | 理論上の最大通信速度 | 周波数帯 |
IEEE802.11ax | Wi-Fi 6 | 9.6Gbps | 5GHz/2.4GHz |
IEEE802.11ad | WiGig | 6.8Gbps | 60GHz |
IEEE802.11ac | Wi-Fi 5 | 6.93Gbps | 5GHz |
IEEE802.11n | Wi-Fi 4 | 600Mbps | 5GHz/2.4GHz |
IEEE802.11a | 54Mbps | 5GHz | |
IEEE802.11g | 54Mbps | 2.4GHz | |
IEEE802.11b | 11Mbps | 2.4GHz |
次世代通信規格「IEEE802.11ax (Wi-Fi6) 」
次世代の無線LAN規格である「IEEE802.11ax (Wi-Fi6)」の普及が本格化し始めたのはつい最近だ。現在主流は「IEEE802.11ac (Wi-Fi5)」で、その後継に当たる通信規格である。11acを基準にMU-MIMOの拡張、変調多値数の拡大、OFDMA伝送などを採用。Intelの第10世代CPUは簡単にWi-Fi6に対応することができるため、筆者の見立てでは有線のCAT8よりも早くWi-Fi6が普及すると思われる。
ちなみに筆者はWi-Fi6対応の無線LAN子機にTP-LINKのTX3000Eを購入した。
現在普及しているものは「IEEE802.11ac (Wi-Fi5)」
2019年12月現在普及している通信規格はIEEE802.11ac (Wi-Fi5)で、2016年以降に製造されたルータであれば対応していることが多い。理論上の最大速度が6.93Gbpsであるため、契約している回線が1Gbpsであれば無線でも速さはあまり変わらない。
周波数帯の特徴
60GHz | 通信可能距離が10m程度と短く、直進性が強く障害物により電波が遮断される電搬特性のため、携帯電話などモバイル機器ではなく、固定的な利用方法をするものを想定。5GHz帯よりも電波干渉が少ない。また、ジェスチャーによる電子機器操作、生体情報センサー、高精度な顔認証といった60GHzの高度化に関する検討が総務省で行われている。 |
5GHz | 障害物に弱い電搬特性で、2.4GHz帯に比べて利用している機器が少なく電波干渉を受けにくい。また、5GHz帯は気象レーダと同じ周波数帯のため、電波干渉を防ぐためW52、W53の8チャンネルが屋外での利用が電波法により禁止されている。 |
2.4GHz | 障害物に強い電搬特性だが、2.4GHz帯は利用している機器(家電やBluetooth等)が多く電波干渉を受けやすいため安定した通信が行えない場合がある。 |
高速な無線LANを実現するには
当然11acや11axといった規格を利用する際にはルータ(親機側)やPC、スマートフォン(子機側)などは対応端末を利用する必要があり、親機、子機の双方が規格に対応していないと該当規格での通信は不可能だ。規格に対応していても価格に差があるのは、ルータ自体のスペック(通信速度やIPv6など)の差である。
11ac対応ルータ・子機
価格は高いが、NECのAterm WG2600HP3 PA-WG2600HP3は11acに対応しており、5GHz帯の転送速度1733Mbps、2.4GHz帯800Mbpsと利用台数18台と優秀だ。更にIPv6、MU-MIMO、バンドステアリングにも対応しており、ハイスペックなルータになっている。
まあこれもピンキリなのだが、上記でオススメした11ac対応ルータの5GHz帯転送速度1733MbpsなのでArcher T9UHを勧めておく。5GHz帯の転送速度1300Mbpsだ。少し高いが4000円程度なので頑張れば出せる。2000円程度のものは800Mbps程度しか出ないものが多いので、ルータをハイスペックにしたら子機もハイスペックにした方が良い。逆に、この金額を出したくない場合はルータ・子機ともにスペックを低くするべき。
11ax対応ルータ・子機
11axに対応しているルータは基本的に安いものはない。今後普及するにつれて安くなっていくとは考えられるが、記事作成時点では高いので、回線環境も整っていない時点では必要ないだろう。
私もTP-LINKのWi-Fi6子機を購入したが、TP-LINKはハイスペックな製品を競合に比べて安く販売していることが多い(とはいえこのルータは高いが)。上記は 5GHz帯の転送速度4804Mbps、2.4GHz帯1148Mbpsと利用台数100台。同じようなスペックのASUS RT-AX88Uよりも1万程度安い。
11ax対応子機は新しい規格故にまだ数が少ない。ASUSとTP-LINKから発売されているが、安くてコスパが良いのでTP-LINKのArcher TX3000Eがおすすめだ。まだ種類が少なく選択肢がないため、特に急いでない場合はもう少し増えるのを待つという手もある。
最大通信速度一覧 (有線)
規格 | 理論上の最大通信速度 | 帯域 |
CAT8 | 40Gbps | 2000MHz |
CAT7A | 10Gbps | 1000MHz |
CAT7 | 10Gbps | 600MHz |
CAT6A / CAT6E | 10Gbps | 500MHz |
CAT6 | 1Gbps | 250MHz |
CAT5e | 1Gbps | 100MHz |
CAT5 | 100Mbps | 100MHz |
同じ最大通信速度でも帯域幅が広い方が大量のデータの通信が可能のため、場合によっては高速になる可能性がある。
CAT8は普及が進んでおらず利用が困難
現在最新の有線LANの規格はCAT8である。検索するとCAT8準拠のケーブルは存在してはいるが、プロバイダやルータ、スイッチングハブなどが最大速度40Gbpsに対応しているものはほぼ無い(というか無い)。また、CAT8準拠と記載があるものの、互換性が怪しい製品ばかりなので現時点でCAT8の利用は難しい。
ケーブルは契約している回線やルータによって選択
ケーブルは自分の契約している回線の最大速度によって選択する必要がある。10Gbpsの回線を契約している場合はCAT6A、CAT7、CAT7A。1Gの回線であればCAT6以下で良い。恐らく多くの読者の回線環境は1G回線であるため、CAT6あれば十分だ。ちなみにぶっちゃけると1Gbps回線であれば有線でなく無線の方がおすすめだ。
結論を一番先にに書いてくれていて助かります